「本当に知りたいこと」を「リサーチクエスチョン」に変身させる試み

リサーチデザインの授業、10月14日締め切りで課題が出ていました。

授業内容や添付ファイルを参考にしつつ、各自の問題意識に対してどのようなアプローチが適しているか、量的・質的両面から検討してください。
1000字程度の文章にまとめて、10月14日(水)までに提出してください。

困りました。私は未だリサーチクエスチョンが決まらずぼんやりした状態なので、アプローチ方法と言われましても…

『政策リサーチ入門』には、適切なリサーチクエスチョンが決まったら、研究の半分(大半という説も)は終わったも同然、と書かれてあります。どうりで今、こんなに苦しいはずです。図書館情報学コースの同期も多くの人が苦しんでいます。

この本には、とりあえずリサーチクエスチョンを作ってみて、後でどんどん改善したらいいし、うまくいかなかったら元に戻って立て直せばいいと書かれていて、気が楽になりました。

政策リサーチ入門―仮説検証による問題解決の技法

政策リサーチ入門―仮説検証による問題解決の技法

 

仮のものとして考えてみます。

 さて、私が最終的に知りたいことは、以下のような大変実務的な疑問です。

公共図書館におけるコラーニング・フューチャーセンター等の機能を持つ場をうまく運営するにはどうしたらいいか。

はい、指導してくださる先生方の眉間に皺が寄るのが目に見えるようです。「うまくって何?どうやってそれを測るの?」と散々言われてきました。

本当に知りたいのはこのような疑問ですが、もう少し具体的なものを一つ挙げるとするならば、

フューチャーセンターにおいて多様な参加者が未来志向で問題解決に向けた議論を行うにはどうすればいいか。その場において、図書館員はどんな支援ができるか、何をすべきか。

まだこれでは問いになっていないので、「なぜ~なのか」という形に直します。

なぜフューチャーセンターは、様々なステークホルダーが未来志向で議論や対話ができると考えられているのか。

ここで、マイケル・バーズレー教授が提唱する、リサーチクエスチョンをAとBの二つのタイプに分ける方法で具体的な問いに分割していきます。

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「なぜフューチャーセンターは、様々なステークホルダーが未来志向で議論や対話ができると考えられているのか」をタイプAクエスチョン(概括的な問い)として設定し、タイプBクエスチョン(具体的な問い)に分割していきます。

・なぜヨーロッパでフューチャーセンターが発祥し、広まったか

・なぜ企業内にフューチャーセンターが設置されるのか

・日本でフューチャーセンターの効果はどのようなものとして捉えられているか

・フューチャーセンターを設置した大学(あるいは企業、あるいは行政)はどのような効果をあげているか

まだ出てきそうですがとりあえずこのくらいに分割しました。それぞれをさらにタイプBクエスチョンに分割していくこともできそうです。細分化した各問いに対する答えを見つけるのに適した手法を量的・質的、あるいはミックスしたものを選択する、ということになるのね!修士論文だから細分化したもののうち一つか数個、博士論文だったらもっとたくさん取り組む、みたいな感じでしょうか。

ただ、細分化すると、自分の本当に知りたいことからどんどん離れていくような気もします…。

研究テーマを決める過程は、入試の際に提出した研究計画書で広げた大風呂敷を畳んでいく作業だとは聞いていましたが、イメージとしては理解できても、畳むには実際どうしたらいいのかが分かりませんでした。今回はその作業方法の一つを学びました。

今日の授業は「リサーチ・クエスチョンと仮説」がテーマで、これまた聞いておかなければならなかったのですが、あいにく遅番勤務のため欠席せざるを得ず残念でした。

第6回 OpenGLAM JAPANシンポジウム参加報告

10月11日(日)、第6回 OpenGLAM JAPANシンポジウム「オープンガバメント・オープンデータの将来」が開催され、参加してきました。

第6回 OpenGLAM JAPANシンポジウム「オープンガバメント・オープンデータの将来」 #OpenGLAM - Togetterまとめもご参照ください。

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今回のイベントは、Web上の百科事典Wikipediaの母体となるウィキメディア財団の事務局長のライラ・トレティコフ氏が来日されることをきっかけに設定されたもので、翌日は「Wikimedia Tokyo meetup with Lila」というイベントも開催されました。私は一日目のみの参加です。

基調講演としてライラさんより、「ウィキメディア財団は何を目指しているのか」「ウィキメディアの図書館やオープンガバメントに関する取り組み」の紹介がありました。

日本は世界で2番目に利用が多く、ライラさんも翻訳ソフトを使って、日本版のページをよく閲覧しているそうです。様々な機関や取り組みに対するサポートや、世界のGLAM機関がWikipedia/WikimediaCommonsを活用していることについて紹介がありました。特に、ドイツの連邦公文書館が資料をアップロードし、たくさんのウィキペディアン(ウィキペディアの編集者)がメタデータを付与することによって、これまでは「ただ存在していた資料」が活用されるようになったという話題は質問も飛び交い、参加者の注目を集めました。

休憩をはさみ、この後は、以下のスピーチがありました。
・オープンガバメント/オープンデータの現在:平本健二氏
国立国会図書館の取り組み:国立国会図書館:橋詰 秋子氏
・DBpedia Japanese:国立情報学研究所 加藤文彦氏
ウィキペディアタウン―図書館員の実践として:
 京都府立図書館 是住久美子

ということで、私もウィキペディアタウンの取り組みについて発表させていただきました。当日のスライドはこちらです。

www.slideshare.net

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最後のディスカッションタイムでは、「日本ではNDC(日本十進分類法)がオープンデータとして公開されていない。このような専門家が作っているボキャブラリーを公開することについてウィキメディア財団ではどのような働きかけを行っているのか。」という質問が出て、「それが誰にとっても役立つはずのデータであれば、直接働きかけることをやっている。特に政治家に対し、オープンにすることの重要性を働きかけてほしい。」とライラさんが回答されました。

また、私の率直すぎる質問「日本の活動もウィキメディア財団からサポート(イベント開催する際のスタッフの交通費など)を受けられるのか」に対しては、ライラさんを含め、日本の参加者からもそういった助成制度がいくつかあるということを教えてもらいました。ただ、これについては、世界的に見ると貧しい国の為に財団のお金は使われるべきで、日本は独自で財源を確保すべきだとして、OpenGLAM Japanがスポンサーを獲得する必要性を強調する意見も出ました。

今回のシンポジウムを通じて、ウィキメディア財団の活動が身近に感じられ、各国の、特にGLAM機関がWikipediaとどう関わっているのか情報をキャッチしていきたいと思いました。あと、Wikisurceとか、私の知らない姉妹?プロジェクトのようなものが他にもたくさんあるようで、興味が惹かれました。

今回のイベントで印象的だったのは、ライラさんや財団のコミュニティ・アドボカシー・チームのヤンさんの通訳係として担当されたお二人の仕事っぷりで、講演時はライラさん達の言葉を逐次通訳して日本語で私たちに伝えて、日本人の発表の時は、Webの共有ファイル上に、発言内容を英語で(すごい速さで)入力してライラさんたちが参照するという、通常だったらとても二人ではこなせない作業量をすごいスピードでやっておられて、素晴らしかったです。

私もちょっとは英語できないといけないなぁと思いました。

 

図書館情報学の「研究」について

2015年4月15日の図書館情報学研究入門の授業。佐藤翔先生が「図書館情報学研究のススメ(方)」の話をしてくれました。

その授業で一番印象に残っているのは、『「研究」とそれ以外を意識する』というところで、

図書館情報学の研究論文としては、日本図書館情報学会誌Library and Information Science(慶応)情報知識学会誌図書館界の研究論文、これらについては研究論文であるけれども、図書館雑誌現代の図書館情報の科学と技術カレントアウェアネスなど、原稿依頼をして、著者が自由に書いて、査読もされない(文章表現上のチェックを除く)論文は「研究」ではない。バックグラウンドの情報としては使うことができるが、学会発表や修士論文の書き方の参考にはならない。

と説明されたことです。

大学院に入るまで、図書館に関する論文が掲載された雑誌について「研究とそれ以外」を意識していませんでした。改めて研究論文と言われる論文を読んで見ると、なかなかとっつきにくいものが多いですし、現役の公共図書館員である私にとっては、それで?それが私たちの仕事の何の役に立つの?という感想がつい出てきてしまって、研究自体にあまり興味を持っていない自分にも気づきました。同志社大学図書館情報学コースの大学院が出来ると聞いて、単純に勉強したいと思って受験したわけですが、大学院とは、教えてもらう場ではなく、自ら研究する場であるという当たり前のこともよく考えずに入ってしまったのです。自分は大学院に入るべきじゃなかったのではないかと考えるきっかけになった思い出深い授業です。

図書館情報学の研究論文掲載誌RSS

http://newsformat.jp/r/XChPJ6PDrDRZs!1.xml

リサーチデザインの授業から「量的研究と質的研究」

10月8日(木)、6限目は「リサーチデザイン」増田知也先生の授業(2回目)でした。

同志社大学 シラバス検索/検索結果/リサーチ・デザイン

増田先生はまだお若いのですが、分かりやすい表現や例を用いて授業をされるのでとても理解しやすいです。同じことを表現を変えて何度か言ってくれるのも、一回でなかなか理解できない私のような者には助かります。

この日は、量的研究と質的研究がテーマで、どっちが優れている、いやそんな争うような問題じゃいだろ、などと研究者が戦わせてきた議論を紹介され、量的研究、質的研究の断絶について受講生とディスカッションを行いました。

一番印象に残ったのは、下の図です。看護学、医学、臨床心理学というものは臨床科学であり、病気を治すなどといった問題解決を目的に研究がされているのに対して、生理学や実験心理学などは因果関係を解明することが主な目的である。私たちが所属している総合政策科学は臨床科学の仲間であり、問題解決を目的とする学問であるというところでした。

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質的研究は看護学の分野で最近すごく発展しているらしく、一方で政策学の分野では停滞しているそうです。

この図を見て、腑に落ちたのです。私が研究テーマとして取り上げたいことを図書館情報学の先生に言うと「それはどうやって測るの?」「どんな方法で研究するの?」と追及され、困り果てて、逆切れしたり(迷惑)してたのですが、私はこの図を見て、「あ、そうか。図書館情報学は量的研究の方法を取ることが多いから、私がやりたい研究のテーマに合う方法が図書館情報学の論文からなかなか見つからないんだ。臨床科学寄りの問題解決を目的とした研究方法を選択すればいいんだ。」と確信が持てました。

エスノグラフィやアクションリサーチなどの質的研究をベースとしながら、問題解決に必要であるならば量的研究も選択するという感じで考えていけばいいのかな、と今回の講義を受けて思いました。両方をミックスしたミックスメソッドというのもあるそうです(15回目の講義のテーマ)。

とはいえ、まだまだ研究のテーマすらぼんやりしている状態は続いています…。